たとえばそれが始まりだったとして
経過―一週間―
それから一週間。
桐原君は毎朝迎えに来てくれて、学校に着くまでの三十分、私達は何でもない話に花を咲かせた。
桐原君は三人兄弟の長男で、中学生の弟と小学生の妹がいることを教えてくれた。
話を聞くと、弟くんは相当やんちゃで桐原君に対してのみ常に反抗期らしい。だけど両親が共働きで家のことは弟くんに任せっきりにしているため、部活で帰りの遅い桐原君は彼に強く言えないようだ。桐原君、口では生意気だと言っているけれど、任せっきりにするなんて信頼がなければできないはずだ。弟くんだって、反抗期というのは愛情の裏返しなんだと思う。
妹のちぃちゃんは、とにかく可愛いらしい。まだ小学二年生で、桐原君はもちろん、弟くんもちぃちゃんには弱いとのことだ。年が離れてるから可愛くって仕方ないんだろうな。仕事でいない両親の代わりによく遊んであげるからか、ちぃちゃんもお兄ちゃん二人には懐いているみたいで、私も噂のちぃちゃんに会ってみたくなった。そう言うと、今度是非遊びにおいでと笑って言ってくれたので、じゃあお邪魔しますと私も笑って返した。
きっと、桐原君はお家では頼れるいいお兄ちゃんなんだ。
少しだけ羨ましいと思った。
私の家も、決して仲が悪いわけではないけれど、もう何年も騒がしさとは疎遠だったから、賑やかな桐原家を想像したら自然と苦笑がもれた。
あとはだいたいサッカーの話で、昨日の練習で何々が上手くいかなかったとか、先輩の誰々はディフェンスの何とかというポジションが上手くて自分ももっと上手くなりたいとか、私はサッカーに詳しくないので固有名詞がわからない事もあったけど、桐原君が熱心にサッカーに取り組んでいるというのはすぐにわかった。
話をしてる時の桐原君は本当に楽しそうで、サッカーが大好きなんだなあと思った。
真面目な桐原君をちょっと尊敬した。
私は主に学校の話をした。
みーこと遠藤のことや、授業や先生についてのこと、あとは購買のおばちゃんのことや、あんぱんが好きで限定の特製あんぱんを狙っていることも話した。