たとえばそれが始まりだったとして

経過―二週間―


「で、小春、どうなのよ」

「ナニガデスカ」

「惚けてんじゃないわよ。桐原よ、桐原修一。今朝も仲良く揃って登校してきたって調べはついてんのよ!」

――ばんっ!

「黙秘権を行使します遠藤刑事」

「ハルー? それはないんじゃないのー?」

「小春、カツ丼はないけどあんぱんならあるわよー」

「なっ! それは駅前のパン屋さんの特製粒あんぱん!」

「ほらほら、ハルもあんぱん食べたいでしょ? 白状しなよー」

「ここのあんぱんは美味しいのよねー。生地は柔らかいしあんこはたっぷりだし絶品よ」

「うぅっ。二人とも用意周到すぎ」

今はお昼休み。
机をくっつけて遠藤とみーこと向かい合っている状態だ。
待ちに待ったこの時間、楽しい楽しいランチタイムが始まる。

……はずだった。

なのにどうしたわけか、私は二人に取り調べを受けている。
案件はやはり彼、桐原修一くんですよ。
お弁当食べたいんだけどなあ。

「あれから二週間だよ? 何か心境の変化はないの?」

そう。みーこの言う通り、桐原君に告白されてから、早二週間が経とうとしている。
だけど私は未だに答えを出せずにいた。

「ハルー?」

「桐原君いい人だなぁ、とか?」

「小春ー!」

「遠藤、落ち着いて! ハル、それだけなの?」

「たの、しい?」

「なんで疑問系なのよ!」

「遠藤! うん、あとは?」

「桐原君、笑うと、嬉しい」

「なんで片言なのよ!」

「遠藤! それで?」

「桐原君に会いたい」

「だからなんで……って、はあ!?」

「遠藤ー! ハルが、ハルがー!」

「……」

「小春、あんた……」

「そっかそっか、会いたいかあ」

「ははあ、やるわね桐原修一」

「これはもしかしたらもしかするかも!」

「小春にも春が来るかもしれないわね」

「ハルだけにね!」

そう言って人目もはばからずに大笑いするみーこと遠藤。

「なんなんですかアナタたち」

教室の温度十度くらい下がったんじゃないかな。


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