たとえばそれが始まりだったとして
晴天の土曜日
本日土曜日。
私は約束した通り、お姉ちゃんと街に出ていた。街、とお洒落に言ってみたけど、電車で数駅、自動車で三十分弱の距離にあるショッピングモールで、外の通りにも飲食店や洋服屋さんや雑貨屋さん等が並んでおり、まあ買い物には打ってつけの場所なのだ。
行きはお姉ちゃんの運転だったから気にならなかったけど、こうして車内の冷房から離れてみてわかる。
「……暑い」
昨日の大雨はどこへやら、すっかり天気は回復して、空には太陽が燦々と輝いている。雨上がりなだけあって、湿度は高め、まだ五月なのに蒸し暑い。外を歩いているだけで汗をかきそうだ。
「小春ー! 何処に行ってんの! 勝手に離れるんじゃないわよ!」
「はーい……」
少し離れた店の前で、お姉ちゃんがこちらを向いて叫んでいる。ひとりで先に進んで行ったのはお姉ちゃんの方なのに、と理不尽に内心溜め息を吐きながら、しかし今日はお姉ちゃんに付き合うのが使命のようなものだからと、私は渋々お姉ちゃんの傍へ駆け寄った。
立ち寄ったのは、洋服屋さん。ちなみに、本日五軒目の服屋さんである。
お姉ちゃんは既に店の中に入っていて、自分はどうせ用はないのだし外で待っていようかと一瞬迷ったけど、やっぱり付き添っていようと思い直し店の中へと足を踏み入れた。この陽気の中外でじっとしているのは自殺行為だし、何より買い物に迷ったお姉ちゃんが私に相談しようとした時傍に居ないのは後々面倒だ。今日は一日付き合うと決めたばかりだし。
「あっ小春ー、ちょっとちょっと!」
おっと、早速お呼び出し。
「はいはーい」
色違いのワンピース二着を手に私を呼ぶ我が姉の元へと苦笑いで急いだ。
それから更に数軒お店を巡って、空腹を感じ時計を見たら十三時を過ぎていた。そりゃあお腹も空くよな、と納得した所でお姉ちゃんにお昼にしようと持ち掛けて、一旦ショッピングモールを出る。そして通りをちょっと歩いた先にある洋食屋さんに入り、現在ペンネアラビアータを消化中。ピリッと唐辛子の利いたトマトソースが絶品だ。
「はあ、あんた、くそ暑いのによく食欲なんてあるわね」