たとえばそれが始まりだったとして
口元をひくひくさせる私を見て、失礼極まりない事に三嶋君は依然笑みを浮かべたまま、
「なんてね、冗談だよ。さすがに友達の好きな人だと分かっててそんな事はしないよ。それに、初めから春日原さんがついて来るとは思ってなかったしね」
そう、何とも軽い口調で言ってのけたのだった。
私はただただ絶句。
これでもかってくらい三嶋君を凝視した。向かいに座るその人は、楽しそうに私を見て笑っていて。
この時確信した。
私この人苦手だ……。
「はぁー」
体中の生気を全て吸い取られたような気になる。三嶋君のあまりの奔放さにげんなりしていると、タイミングが良いのか悪いのか注文の品がやってきた。
私はアイスレモンティーで、三嶋君はアイスコーヒー。
目の前に置かれた半透明なオレンジ色に気を取り直して、グラスにガムシロップを注ぐ。カランコロンという涼しげな氷の奏でる音に、沈みかけていた気分が段々明るくなっていく。そうやってしばらくストローを遊ばせて、満足した私はレモンティーに口を付けた。
ストローでレモンティーを吸い上げて、冷たさが喉を通り抜けたその時、見計らったように三嶋君が口を開いた。
「春日原さん、修一のことどう思ってる?」
だけどど直球なその質問に、思わずレモンティーを吹き出しそうになり慌ててハンカチで口を覆う。もう少しで女の子にあるまじき行為をする所だった。
「けほっ」
咳き込む私に、三嶋君は優しく声を掛ける。
「大丈夫? ごめんね、そんなに驚くとは思わなくて」
私を心配するその言葉に、殊勝な所もあるんだ、とちょっぴり見直した。……のに、三嶋君を見た途端、それは呆気なく覆された。
「……確信犯ですか」
声音とは裏腹にニッコリ笑っている三嶋君に裏切られたような気持ちになる。
「三嶋君は何がしたいの」
桐原君の友達でも我慢には限界があって、これ以上同じ空間にいると疲れ果ててしまいそうだった。
「さあ。何がしたいんだろうね」
もう、帰ってもいいですか。