たとえばそれが始まりだったとして
口ではそんな事を言っていても、その口調はどことなく弾んでいて、私はほんのり温かくなった。
「三嶋君て意外に友達思いなんだねー」
そのせいで浮かれていたのかもしれない。思った事がぽろりと口から出てしまった。
「……へえ“意外”なんだ。そっか、春日原さん俺の事友達なんてどうでも良いとか考えてる酷い奴だと思ってたんだ。そっか、確かに会ったばかりだけど、仲良くなったつもりでいたのは俺だけだったんだね……」
うつむき加減で弱々しくそう言った三嶋君は誰が見ても明らかに沈んでいて、先ほどとは百八十度違う態度に私の冷静はすぐさま吹っ飛んだ。
「ち、違うよ! そういう意味じゃなくて! 三嶋君が酷いひとだなんてそりゃ最初はつぶあんの粒くらいは思ったかもしれないけど今は思ってないから! だって三嶋君桐原君の事ちゃんと心配してるじゃん! そ、それに私だってちょっとは仲良くなったと思ったし、もっと仲良くなりたいよ! だ、だからねっ」
冷静でいたならば、そう思われるような態度ばかりとっていたのは三嶋君自身だろー! と大声で叫んで……否普通に突っ込んでいたに違いないのに、今までマイペースに振る舞っていた三嶋君が落ち込んでいるというそれだけで私は可笑しくなっていた。
背には冷や汗がだらだらで、手は所在なさげに空をさ迷い、目線は落ち着きなくふらふらしていて。
その泳いでいた目がふと三嶋君を捉えた時、三嶋君が俯いて肩を震わせている事に気が付く。
時が止まったかのように手も口もぴたっと動くのをやめた。そしてじっと三嶋君を見る。
「……くっ……」
……うん、私は馬鹿だ。
学習能力がないのは私だった。
ちょっと考えれば分かったのに。
馬鹿な自分にうんざりした。
腹が立つというよりは必死になっていた自分が恥ずかしい。必要ない事までべらべら話してしまったし。ああもう自己嫌悪。