たとえばそれが始まりだったとして
そう、例えるならば、笑えないレベルの失態……授業中半目でちょっと口を開けた状態で居眠りしちゃってさらに口からは涎を垂らし訳の分からない寝言を先生含むクラスの全員に聞かれてしまった時のような……ヤバいヤバい本気で気を付けようもしそんな事したら絶対遠藤達に縁切られるし学校での生活そのものが危うくなる。
私がそうやって色々と頭を悩ませている前でこの人は。
「春日原さんっ、俺を笑い死にさせるつもりなのっ?」
「断じてその様な事は御座いません」
「ぷっ! はははははっ」
あー、何だろうこの脱力感。
もう勝手にして下さい。
三嶋君が笑い上戸だって事はよく分かったから。ええ身を持って教えてもらったよ。
「はぁー」
この人と一日一緒にいるだけで、体内の酸素は尽きてしまうのではないだろうか。
この人と友達で、桐原君は大丈夫なのだろうか。今度機会があったら聞いてみよう。桐原君はどうやって三嶋君と付き合っているのかを。
「……あー、今日はよく笑ったなあ。修一が春日原さんとの登校楽しみにしてるのが分かった気がするよ」
「え」
もしかして桐原君は私に笑いを求めているのか!? でも桐原君は声を上げて笑うって言うよりはにかむ方が多い気がするのだけど……。
「あれ、もうこんな時間。三十分て約束だったのに一時間近く経っちゃったね。ごめんね、帰る所だったのに引き留めちゃって」
そう言って申し訳なさそうに眉を下げて小さく笑う三嶋君に私は初めてまともな一面を見た気がした。
最後の最後でまさかの常識をふるわれるとは。
「お詫びに此処は俺が奢るね。あと、お腹が痛くなる程笑わせてもらった御礼も兼ねて」
驚く私に三嶋君はニッコリと微笑んで伝票を手に取るとレジへと向かう。
私も慌てて後を追った。
「あの、どうも御馳走様でした」
喫茶店を出て、今私達は駅の前にいた。電車で帰る私に対し、三嶋君は知り合いの人が此処まで迎えに来てくれるらしい。
「気にしないでいいよ。それより、送ってあげられなくてごめんね。これからちょっと用があって。春日原さん電車で来たの?」
「ううん。行きはお姉ちゃんの車で来たの」
「お姉さん?」