問題アリ(オカルトファンタジー)
そう言ってノエルはベッドサイドに置いていたリンゴの皮を剥いた果物ナイフを服の中に忍ばせてベッドを出ると下へ行こうと部屋を飛び出していった。
ジューンは『ダメだ』と叫びながらうまく動かない身体を動かしてノエルの後を追う。
「ノエル、ダメ!ここに居て頂戴!」
立ち止まっていたノエルの腕を引いて抱きしめたとき、部屋に違和感を覚えて顔を上げた。丁度、玄関手前の階段付近。
そこにはケニスが複数の従者を、槍を持った従者を従えて、静かに立っていた。
ノエルは怯えたように震えた目で、ケニスから目を逸らすことが出来ずに立ち尽くしていた。
その震える目に映る、ケニスの、苛立ちを灯した瞳。
「ジューン、どういうことだねこれは」
「……………もう止めて、子供たちを、ノエルを虐げるのは…!この子達はもっと自由に生きていいはず、愛されていいはずよ!この子達が何をしたというの?あなたを陥れた!?何の罪も犯してはいないでしょう!!私の息子だって…何をしたというの…ッ…」
キツクキツク抱きしめるジューンの手を振り解くことなく、ノエルはケニスから顔を背けてジューンの胸に顔を押し付けた。
しかし、刺さる言葉は冷たいものだった。
「潮時のようだな、ジューン」
言葉と同時に従者がノエルの腕を引っ張ってジューンから引き剥がした。
嫌がるノエルも大の大人数人に押さえつけられれば抵抗も出来ずただ、その名前を呼ぶしか出来ない。
そして、目の前で。
ジューンは磔にされた。手の平と脚に、ささくれ立った木の杭を打ち付けられた。
絶叫。
二人が一緒に食事を取っていた、幸せを象徴する、テーブルへ。