問題アリ(オカルトファンタジー)
冒涜に近かった。
そして切れ味の鈍いナイフでジューンは腹を裂かれた。何度も失敗し、引っかかりながら一本の大きな赤い線を作った腹からはトマトを潰したような、それ以上に赤すぎ、黒すぎる液がテーブルを、床を、汚して。
出血性ショックを起こし、身体をガタガタと痙攣させるジューンを見て、男たちの野太い笑い声が響く。
伝統的な拷問と処刑方法、内臓の引きずり出し。
引き出された大腸は、少し掠れたピンク色をしていて、妙な水音を立てながら、ジューンの体内から高々と引きずり出された。
それでも、ジューンはまだ死なず、壊れたかのように自分の中に納まっていたそれが、自分の目の前に、引きずり出され、その姿を晒し、その異常さに、目を逸らしたいのに逸らすことが出来ず、パニックを起こし、絶叫を上げていた。
その絶叫にノエルは自分の身体を押さえつける男たちを振り払おうとするが、身体が恐怖に震えてうまく力が入らない。
力が入ったところで、大人の男数人を押さえ込める力は無いが、ノエルはそれでも、何度もジューンの名前を叫んだ。
大腸の先を引きずり出していた男たちは笑いながらその先端を手繰り小腸を取り出し、繋がった一本を全て取り出して持ちきれずに床に垂らした。
弾力があり、柔らかそうな、ミミズを大きく太くしたような、それ。
湿った質量のあるそれが落ちた音が、ベチャ、と鳴った。
声は、息が切れたのか、もう聞こえない。
ジューンのあの小さくて少し肉の付いた、優しいあの体温も、皺くちゃの笑顔も、声も、全てが、どうなったのか。
そのミミズが微かに揺れる。
薄い電灯に照らされて、微かに光を反射させるその液体がまるで最後に手を伸ばすかのように、ノエルの足元へ伝った時、男たちが事切れたジューンに興味をなくしバラバラと離れていって見えるようになってしまった、内臓を引きずり出された、ジューンの白い目と視線がぶつかった瞬間、ノエルの意識は暗闇へと落ちた。
そして。
ノエルが意識を取り戻したとき。
ジューンのことは全て記憶から消え去っていた。
悲しいと取るか、幸せと取るかは人それぞれだろう。
ノエルには、もう認識することなど出来ない。