問題アリ(オカルトファンタジー)
それでもノエルは牢獄の中、絶望しきった目で、漠然と何故か湧き上がる殺意を拭い去ることもせず、果物ナイフをずっと暖め続けた。
そして、ノエルが20歳を迎えた頃、ノエルは計画を実行したのである。
いつものようにかくれんぼを強制されたノエルは部屋一つ一つへ回り、その部屋の住人や、出会う人間の首を片っ端から切り落としていたのである。
二つの口を作った住人たちはジューンと同じように血飛沫を上げて、クルクルと回って床に倒れこんだ。
鬼ごっこをしていて覚えた武器庫から槍も調達し、ノエルは自分をここまで貶めた人間たちに復讐するという決意を元に、女子供さえも手に掛けた。
自分をここまで傷だらけにした人間たちを。
自分の心をここまですり減らした人間たちを。
自分が人を殺しても何の罪悪感も持たないほどの人間になってしまった原因の人間たちを。
ケニスとの子供を腹に宿していた女には、その腹さえも槍で何度も突き刺して、腹から出てきたこの世の空気を吸うことなく死んだ子供を見下ろして、ニヤニヤと、笑みを浮かべてその頭に槍を貫通させたくらいである。
人が簡単に死ぬことを、この手で簡単に人が殺せることを、その無意味さを知った。
そして、力が欲しいと想った。
この世界の全ての人間を殺せる力が欲しいと。
味方など、誰一人いないのだから。
耐えればいつか、なんて世迷いごとにもう興味などはなかった。もう今でしか、生きられない。限界だった。
誰もが自分を陥れるだけの存在ならば、そんな存在に怯える前に消せばいい。
ノエルはかくれんぼをはじめた。今度は自分ひとりが、鬼となって。
追いついたケニスの驚愕の表情に、無表情に口の端だけを吊り上げた形で返すと、その背中をまず一突きし、恐怖に怯え許しを乞うその声を無視してその両手足にナイフを刺してうつ伏せのまま磔にすると皮を剥ぎ始めた。