問題アリ(オカルトファンタジー)
いつの間にか住み着いた彼はこの教会の内装を美しく変え、自分の住みやすい環境に整えて仕事をしていた。
しかし仕事とはいえ、基本的に夜が彼の活動時間となるので、昼間は神父用の懺悔室に備え付けられてある大きな一人掛けのソファで眠っている。
吸血鬼のようだが、そんな生易しい物でもない。
彼は、死神だった。
とはいえ、彼は普通の死神でもなかった。
「あー……よく寝た」
太陽が沈み始めて暫く。
漸く目が覚めたらしい青年はそんなだらしない声を漏らしながら懺悔室から礼拝堂へと姿を現した。
「もう、寝すぎですわフィン様。何時だと思っていらっしゃるのです、十七時ですよ、十七時!ただでさえ無い脳味噌が溶けてなくなりますわよ」
「酷いなぁ、エレン。夜中まで仕事してたんだから仕方ないだろ?」
「何処ぞの黒騎士だって、ちゃんと朝には起きていたというのに」
「アイツは律儀なヤツだからな。…つーか堅苦しい」
懐かしそうに視線を上げて、話題に上った男のことを思い返す。最後に会ったのはいつだっただろうか。
神と久しぶりに会って、無駄に不の魂を作らない、という同盟を組んでそれっきりだったので、かれこれ八十年ほどだろうか。
月日が経つのは早い。一日は長いのに、気付けばもう八十年。約百年だ。
変わりなどは殆ど無い。