問題アリ(オカルトファンタジー)
「自分を差し置いて周りだけが幸せになるのが許せない気持ち。殺してやりたいって、思うのは別に悪いことじゃないだろ?マルシアのように、疎ましい姉を殺してお役御免となった男を殺そうとする気持ちもわかるな」
言いながら立ち上がると一つ伸びをしてフィンは浴室へと向かった。
そこで倒れている全裸の男。
針が刺さっていた顔は何事もなかったかのように綺麗で、タイルに目と口を開いたまま、ピクリとも動かない。
そんな男をブーツの先で突付きながら確認して、手を翳し、その身体からふわふわと浮かび上がった魂を掴むと空へと放ってやった。
「間違いで死んだ人間は早い内に生まれ変われるよ。もっとも、生前犯した罪は悪魔の元で償いな」
そうして用は済んだと、動かない男を見下ろして鼻で笑うとマントを翻してマンションを出た。
「エレン、教会まで一直線ー!」
「もう!レディーに重労働させないでくださいませ」
言いながら、エレンは空中へ飛び上がりくるりと回転すると、巨大化しフィンを背中に乗せると、まっすぐに森の奥へと突き進んで行った。
「姉は愛、妹は金が欲しいなら話し合えば利害が一致したと思うんだけどなぁ…」
「男の為に店を妹にあげてしまえばよかったと仰るのですか?流石にそこまでしないでしょう。店一つなんて結構な額ですよ?」
「中途半端な感情だから、欲しいものが手に入らないんだよ。俺なら何がなんでも手に入れるけどな。人間ってバカだね」
エレンは言葉を返そうかと暫く悩んで、止めた。
後日。
とあるマンションの最上階の端に住んでいる男が浴室で死体となって発見され、青酸カリによる中毒死と断定された。
一緒に暮らしていたはずの女はベッドの下へと血の筋はあるが、姿は見当たらず、失踪。
現在でもこの女の行方を追っているということで、マルシアの画像が連日報道された。
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『敗れた悪者』