問題アリ(オカルトファンタジー)



フィンと呼ばれた青年はそんなことを思い返しながら懺悔室とは反対の、祭壇に向かって左側にある一室へと入り、コーヒーを作り始める。


カップにフィルターを敷いたドリッパーを乗せて、豆を取り出すと手動のミルに入れてガリガリガリガリと豆を挽き始めた。


特に好きなものがないフィンだが、ミルで豆を挽くのは好きだった。


豆が挽き終わるとフィルターに入れてお湯を注いで、放置。そして、完成。


ブラックで飲みながら満足そうな顔で部屋を出ると祭壇で毛繕いしているエレンを見ながら長いすに腰掛ける。



「どこぞの黒騎士のお友達は紅茶もコーヒーも淹れてくれてたぞ?」



「………淹れろと仰るのですか?あたしは飲まないというのに」



プイ、と顔を背けて拒否の姿勢。


魔法で作れるようにするのも馬鹿らしい、とフィンは残念そうに笑いながら諦めると、ズルズルとコーヒーを飲んだ。


人間界ではよく女が男の食べ物や飲み物を用意しているが、エレンはそれを見習う気が埃ほどもないようだ。


若干、弟子の連れていたあの小間使いが羨ましく感じる。



「エレン、今日は暇だし、毛繕いしてあげるよ」



そう言って長いすの下に置いていたブラシをチラつかせポンポンと膝を叩いて見せる。



「今日“も”でしょう?」



祭壇の上で暇を潰していたペルシャ猫で使い魔のエレンは、そんな皮肉を呟きながらもピョンと祭壇を降りて彼の膝へと飛び乗る。


容姿を裏切る事無く、気難しく気が強い、扱いづらいのが彼女の特徴だ。


そんな小姑のような小言を掛けられながらも、否定を返しながら特に苛立つ様子も無くエレンを撫でる。



「我ながら綺麗な毛並みだよなー」



「あら、あたしが綺麗にしてるからですわよ?フィン様が毛繕いなんて、一年に一回じゃないですか」



「ごめんごめん。一週間に一回のつもりなんだけどさー、時間間隔鈍くって」



時間間隔鈍くって、と言いながら週一回を間違えて年一回に出来るのもフィンくらいである。






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