問題アリ(オカルトファンタジー)




相手からは殆ど白しか見えないだろうが、フィンは霊の形や性別、年齢、その心の中に残った『何か』を察知することが出来るので金網があってもなくても同じなので、金網に掴みかかっている女性が黒人であり、フィン、もとい自分を助けてくれる人間を探して地縛霊と化して彷徨っていた事がすぐにわかった。


その背景も。


ニヤニヤ、と笑み。



「ま、壊しても直せるから好きに壊してくれていいよ。それより、随分と長い間助けを求めていたようだけど?」



「もうすぐ、二百年になります……私の無念を晴らしてくれる人を探し始めて」



「それは随分長いなぁ…。いいよ、助けてあげる」



言って、エレンを膝から下ろしてフィンは彼女から詳しい話を聞く事もなく新聞を片手に立ち上がると扉を開けて、彼女の前に姿を現した。


途端に彼女はフィンの足元に平伏して、額を床にこすり付けて、何度も何度も感謝の言葉を述べた。


フィンは何度も同じ言葉を言われるのが嫌いなので微かな苛立ちを抱きながらもその顔にはにっこりと笑顔を貼り付けている。


この魂を手に入れられたことを思えば我慢しようと思えるほどに、この魂は面白い代物なのである。


きっとこの魂はこうなる事を想定されたか、あるいは別の形であったとしても、これからの末路を辿るためのものだったのだろうと、フィンはすぐに想像が付いた。


ならば、その通りにしてやろう。


彼女の顔を上げさせて、先ほど読んでいた新聞を広げたフィンは、彼女の額に手の平を翳す。


淡い光と共に形を崩し、魂となった彼女を手の平に宿して、先ほど広げた新聞へとゆっくりと擦りつけた。


すると、そこに書かれていた文字が溶け出し、一つの記事が白紙になった。そして、そのまま擦り続けていると徐々にボウッと浮かび上がってくる、先ほどの記事とは違う文字。


その文字はまるで最初から書き記されていたかのような一つの記事となった。新しく作られた記事、それは彼女の身に起こった悲劇の内容が記されたもの。


流れが理解できないエレンがフィンの肩に上ってその記事を見つめる。




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