問題アリ(オカルトファンタジー)
*
「ふぁ……」
一つ控えめな欠伸を漏らして、少年はまだ開ききらない瞼を擦りながら玄関を出てきた。
寝巻きであるスウェット姿を恥じ入ることも無いのは、ここに誰もいないからと、気を緩めているからだろう。
寝ぼけ眼もそのままに玄関から出て、門へと続く砂利道を、靴を引っ掛けて進むといつもの通り新聞を手にとってキッチンへと向かう。
ここの家主は殆ど自室、というより書斎から出てこないので新聞を部屋まで届けるのが少年の仕事でもあった。
なにやら今日の新聞は少し皺が入っている。微かな違和感。
いつもならこれをモーニングティーと一緒に運ぶのが常だったのだが、アイロンを掛けたほうが良さそうだ。
そう思って、その新聞をまだ違和感の拭えない表情のままぺラッと捲った、直後。
ふと、目に留まった記事があった。
それは、今から約二百年前になる事件の話であった。
読み進めてすぐ、段々と文字がぼやけて、黒いその文字が蠢き始める。
まるで卵から孵った幼虫のように、文字という卵の中から細かい脚を動かして、徐々に文字の形を崩していくような。
睡魔の所為だろうかと目を擦っても、それが拭われることは無く目の前は徐々に視力を失ったかのようにぼやけ、新聞だけでなくキッチンのコンロも、食器棚も全てが霞掛かって見えなくなっていった。
意識が混濁とする中で、新聞の文字がもごもごと蠢き全て新聞紙から這い出て、足元にボト、ボト、と落ちて、重なり合い、細かい虫の山のようなそれが、黒い、黒い、人に、それが、黒人の、誰かに似ていると、気づいて。
『お前だけは許さない……!!』
唸るような声が聞こえた瞬間、その膨れ上がった黒い文字はインクくさい黒い虫となり、それが重なり出来た手で少年の細い首を片手で鷲掴み、軽々と持ち上げた。
「ふぁ……」
一つ控えめな欠伸を漏らして、少年はまだ開ききらない瞼を擦りながら玄関を出てきた。
寝巻きであるスウェット姿を恥じ入ることも無いのは、ここに誰もいないからと、気を緩めているからだろう。
寝ぼけ眼もそのままに玄関から出て、門へと続く砂利道を、靴を引っ掛けて進むといつもの通り新聞を手にとってキッチンへと向かう。
ここの家主は殆ど自室、というより書斎から出てこないので新聞を部屋まで届けるのが少年の仕事でもあった。
なにやら今日の新聞は少し皺が入っている。微かな違和感。
いつもならこれをモーニングティーと一緒に運ぶのが常だったのだが、アイロンを掛けたほうが良さそうだ。
そう思って、その新聞をまだ違和感の拭えない表情のままぺラッと捲った、直後。
ふと、目に留まった記事があった。
それは、今から約二百年前になる事件の話であった。
読み進めてすぐ、段々と文字がぼやけて、黒いその文字が蠢き始める。
まるで卵から孵った幼虫のように、文字という卵の中から細かい脚を動かして、徐々に文字の形を崩していくような。
睡魔の所為だろうかと目を擦っても、それが拭われることは無く目の前は徐々に視力を失ったかのようにぼやけ、新聞だけでなくキッチンのコンロも、食器棚も全てが霞掛かって見えなくなっていった。
意識が混濁とする中で、新聞の文字がもごもごと蠢き全て新聞紙から這い出て、足元にボト、ボト、と落ちて、重なり合い、細かい虫の山のようなそれが、黒い、黒い、人に、それが、黒人の、誰かに似ていると、気づいて。
『お前だけは許さない……!!』
唸るような声が聞こえた瞬間、その膨れ上がった黒い文字はインクくさい黒い虫となり、それが重なり出来た手で少年の細い首を片手で鷲掴み、軽々と持ち上げた。