問題アリ(オカルトファンタジー)
それは虫で出来た人間で。
まるでハエに集られた死体で。
しかし人間と呼ぶにも形だけが似ているというだけで、それはもう、人でも虫でも、無い。
「あっ…ぐ、…」
気管が圧力に負けてグニャ、と塞がる。
幾つかプチ、プチ、と虫が潰れる軽くおぞましい音が首の皮膚を伝う。
喉奥の痛みと、目の奥の倦怠感と眩しさ。
その腕に掴まれている首でのみ、自分の体重を支えている所為で、頚動脈さえも、締め上げられる。
それでも意識を失うことが無い。
脳が、膨張し圧迫されたような、窮屈さを感じる。それでも。
たくさんの虫で作り上げられたそれは少年の身体を壁に叩きつけては、何か低い声で憎しみの声を連ねている。
が。
カツン、という静かな、それでもこの異常な現場では酷く冷静過ぎて余計に異常な、微かな寒気を持ったその足音が聞こえた瞬間、その手が怯んで、振り返ろうとしたその直後、閃光によって黒い塊は部屋の隅へと吹き飛ばされた。
悲鳴さえも上げる間もない、一瞬の出来事だった。
直後に意識を失いかけていた少年は、持ち上げられていた二メートルほどの高さから墜落し身体を打ちつけたものの、酸素を求めるように咳ごみ、荒い呼吸を繰り返したので、死んでいるということは無いようだ。
「悪いが、俺の紅茶を淹れられるのはコイツだけなんでな」
「……リオ、ン…」