問題アリ(オカルトファンタジー)




ボロボロと、虫が、文字が、床に落ちて、それが段々と人間の皮膚と変わり、細切れになった皮膚を、指先を、耳の切れ端を、白い骨をボロボロとボロボロと、床に、床に。


いっそわからないほどのミンチになってくれればまだ見れたものの、微かに原型を留め、それの元が何処であるかが、わかる所為で吐き気が起こる。


脳もあの波打つ表面の形を綺麗に残した細切れになり、ビチャ、ビチャ、と雨漏りのように落ちていく。


そのあまりにも日常的な音の、元凶の歪さ。


普通の人間ならば耳を覆っても、精神を病む、異常だった。


眼球がポロ、と落ちて、床に倒れる少年を睨み付ける。


まだ終わっていない、まだ許さない、と言いたげに。


その眼球から黒く、細く小さな手が四本生え、虫のように細かく動かし、一直線に少年の元へ這い寄って行った直後。


グシャ。


何の躊躇いも無く、黒いブーツがその異様な目玉虫を踏み潰した。


そして、容赦なくその肉の細切れとなった、見苦しい塊を閃光で消し飛ばして。


絶叫とも雄叫びとも、言える断末魔の叫びを上げて、その姿は塵と化した。



「なぁ?チェス」



床に倒れている少年へ声をかけながら男は残った魂をその手の平に掴み取ると、口の中に放り込んでゴクリと喉を鳴らして飲み込んだ。


最後の最後まで憎しみを抱いていたその魂は、思わず口の端を吊り上げるほどに甘美な味をしている。






あ の 時 、 放 っ て お い て 良 か っ た と い っ た と こ ろ だ ろ う か 。





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