問題アリ(オカルトファンタジー)
汚れた靴を魔法で綺麗に整え、汚れた部屋も魔法で片付けて、先ほどリオンと呼ばれた全身黒を身につけた男は漸く、床で倒れるチェスの傍へとやってきた。
チェスは頭を押さえながらも身体を起こして開口一番「びっくりした」などと、場違いな感想を述べて服の埃を払う。
「…何、今の。ラシェル?」
「その地縛霊があの温暖化脳味噌に助けを求めに行ったようだな…つまらん暇潰しだ」
「だから新聞の内容がおかしかったのか」
言って、先ほど玄関から持ってきた米国の新聞を見つめて、漸く違和感の謎が解けたと、微かすっきりした表情でため息をついた。
ここは英国なので、米国の新聞があるのはおかしいのである。
リオンは米国の新聞を掴むと興味もなさそうに眺めていたが、すぐに鼻を鳴らして口の端を吊り上げた。
何か面白い記事でもあるのだろうかと、チェスは首を傾ぐ。
そこには な ん で も な い た だ の 殺 人 事 件 がいくつも書かれているだけだった。
英国の新聞にも日本の新聞にも数多く書かれていた、一日に起こった殺人事件のごく一部。実際はもっと殺されているだろう。
こういう所だけは各国共通と言える。
「なぁ、チェス。日本の最年少殺人者が何歳か知っているか?」
「へ?知らないよ。八歳くらい?」
「二歳だ」
沈黙。
「嘘!」
「嘘を吐いてどうする」