問題アリ(オカルトファンタジー)



リオンは、というよりこういう世界の人間は綺麗事というものが嫌いだ。特に子どもが見せる純粋な笑顔や、気持ちなどを目の当たりにすると、リオンは吐き気さえも覚えるといって滅多に近づかない。


綺麗に見せようとする綺麗事が一番汚いのだ。


例えば、道路脇に添えられているプランターの中、土を入れて差し込まれている造花の束。


自然に溶け込ませようとして、それでも拭えないその決定的な生きているか死んでいるかの違いを必死に隠そうとする。


その無駄な悪あがきに似ている。


造花ならば造花らしく、フェンスにでもくくりつけられていればいいものを、あえて自然に生きる植物たちのように土に埋められている、その偽装工作。


不愉快以外の何物でもない。


子どもも、それだ。



「例えば…そうだな。二歳児が幼児の顔を剃刀で切りつけて殺した事件がある。ただ面白半分で起こしてしまった事件かと思うが、幼児は顔をずたずたに切り裂かれて殺害されていた。この事件に悪気はなかったと思うか?少なくとも一度目に切りつけられた時点で、幼児は痛みに泣き声を上げただろう。それでも止めずに死ぬまで切り裂いたこの二歳児に本当に悪気は無いか?あいつらは欲望に忠実で、そして無垢な振りをして大人を騙せることを知っている」



「リオンの話は難しいよ。子どもも刑務所に入れるべきだってこと?」



「入ったところで、幼稚園の延長になるだろう。二歳ほどの子どもに、我慢など、水中で一時間息を止めろというほどに無謀で無意味な強制だ。俺が言いたいのは無垢などあり得ないということだ。誰でも人を殺し、殺される可能性を抱いている。それは子どもでもありえない話ではない。間接的・直接的に人は人を殺せる。年齢など関係ない。法律は確かに殺人を咎めているが、今の法律は緩いものであるし矛盾も多い。それをとやかく言う気は無いが、……殺された本人を守る法律は何処にも無い。この意味がわかるか?」








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