問題アリ(オカルトファンタジー)
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「ま、自分を守るのは、法律でも神様でも死神様でもなく自分自身っつーことだな。死んじまったら法律なんかただの紙切れでしかない。法律に頼りきってるやつらが多いと、騙しやすいけどその分つまんねぇ」



「つまらないとは何ですの」



新しく拾ってきた新聞には新たな法律を作ったと大々的に報じられていた。


散歩から帰ってきたフィンはそれを広げて、政治経済・天気予報・地域記事・株価・テレビ欄を見る前に事件記事へと目を落とす。


今日もそれほど面白い殺人事件はなかったものの、細かい字でいくつも報道されている。


そんな最中、ラシェルの魂の消滅に気付けばそんな事を、昨日の夕飯を思い出したかのように特に関心なく呟いた。


エレンは祭壇の上で毛繕い。


突然聞こえた独り言にラシェルの魂が消滅したのかと気付けば、心は痛めないものの呆れたように問いかける。


別に咎める気は無いが不謹慎なのは多少眉を寄せる。こんな事に眉を寄せていれば、いつか眉が引っ付くほどに、フィンの中では日常茶飯事ではあるが。



「自分でどうにかしろって事だよ。殺される前に殺せ、殺せないような弱いやつはそもそも生きるのに向いてねぇ。逆恨みって言葉があるように、綺麗事ほざいてる人間が殺される事なんて少なく無いしな」



「でも、殺せば自分が罰を受ける事になりますわよ?」



「それがわかんねぇんだよなぁ。罰を受けるのが嫌だから殺されてやるってのかよ?」



「フィン様はそもそも、人間らしい感情を持ち合わせては居ないじゃありませんか」



だからこそ死神になってしまったのだが。


とはいえ、死神である無いに関わらず他人のために命さえも投げ出すなど、一体誰のための人生だというのだろうか。


誰かに殺されてやるために学校で面倒くさい授業を受けて煩わしい人間関係にも耐え苦しい思い出もトラウマも克服してかすかに降り注ぐ幸せを根こそぎ啜って生きてきたわけでも無いだろうに。


言われてフィンは自分が人間だった頃を思い出す。




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