問題アリ(オカルトファンタジー)
が、少なくともフィンの場合、一時的な自己犠牲は確かにあったかもしれないが、死ぬ直前などそんなもの微塵もなく殺戮の限りを尽くし、血に酔うほどに他人の返り血を全身に浴びながら町を徘徊していたので、自己犠牲精神は理解に苦しむ。
「確かになぁー、人間のときに買いそびれちまった」
そんな冗談を返しながら新聞を畳むと、他の記事には興味が無いと言いたげにポイと長椅子に放り投げた。
「なぁ、どっちが悪いと思う?殺そうとした人間と、殺した人間」
「そりゃあ……」
殺した人間だろう。
フィンはニヤニヤと笑ったまま答えない。
例え殺そうとした人間がただの快楽殺人犯だったとしても、親の敵だったとしても、殺した人間が正当防衛でも、無意識でも、意図的だったとしても。
どちらかに肩入れをしていれば、法律はずっと穴あきだらけの力の無いただのチラシになってしまう。
「人間って何でも平等が好きなくせに、変なところで贔屓目使うよなぁ。どっちも死ねば平等なのに。一度手を出した人間がそれ以降我慢し続けられるとは思わねぇんだよなぁ、俺」