問題アリ(オカルトファンタジー)
ヘラ、と笑って謝る気のないフィンに、もう、と不満そうに声を上げたエレンは、それでも白い尻尾を振りながらまんざらでもないようだ。
ブラッシングされながら心地よさそうにフィンの膝の上でゴロゴロと咽喉を鳴らしながら、目を細めている。
周りを気にすることの無い優雅な一日。いや、毎日。
基本的に二人は暇だった。この職業は暇でしかないのだ。
人生は死ぬまでの暇つぶし、という言葉があるが、少なくともフィンは一度死んでいるので、絶望的な暇に追われているということになる。
だがしかし、それも少し前まで(といっても数十年前)で、今は昼間は暇なものの、夜は比較的忙しく日々を送っていた。
年々仕事が増え始め、今ではほぼ毎日客が来るという状態なのだ。
なので明け方まで仕事をしているフィンは朝に寝て夕方に起きるという不規則な生活を続けている。
とはいえ、死神には不規則なんてものはない。自律神経失調症になる事だってない。
何とも自由気ままな絶望的暇生活。
「最近ちょっと忙しいしね。夜だけ」
「夜だけ、ね。放っておけばいいのに」
「ま、約束したからさ。消されない程度にはカミサマの言うこと聞かないと」
ニヤニヤと笑いブラシに付いた毛を手で取りながら、エレンの身体にまたブラシを当てる。
床に捨てた先ほどの毛は、床に触れた途端に消滅して跡形もない。
「…楽しそうですわね」
「出来損ないの魔法が蔓延ってる今は結構見てて飽きないよ。俺たちの足元にも及ばないくせによくやるよね」
「科学、と仰ったらどうです?」
「カガク。…はい、終わり」
ポンとエレンの身体を叩いて、ブラッシングの終了を告げるとフィンはブラシの毛を取りながらまだ西日が差し込む窓を眺めて先ほどから10分程度しか過ぎていない事を知れば、長椅子にごろんと横になった。
そして、ぽつりと漏らす。