問題アリ(オカルトファンタジー)
そのスリルはまるでタバコのように、まるでアルコールのように。
日常的には確実に無い分、時たま欲しくなる。それが常習的になればもう止められない。人の血液の味を覚えれば、体内から疼くその感覚が忘れられずに、それ以上それ以上を奪いたくなる。
人々が幸せへと必要以上に手を伸ばし、あれもこれも欲しがる人間と同じように。
人の死も、欲しがるのである。
快楽が他人への意識を上回ったとき、暴走は始まって止まらなくなる。悪意など何処にも無い、無差別に、それは平等的に、手当たり次第に。
止められるまで。
ならば、止まらなくなる前に、先手を打たねば此方に有利は無い。
殺人などレッテルを貼られた人間だけが行なうわけではない。
優しげに微笑む女でさえも、豹変するのだから。
信用してはいけない。人間の全てには。それは、騙すための仮面でしかない。
それをフィンは、厭でも知っている。人間が豹変する事も、簡単に裏切る事も、人を人と思っていない人間も、自分の欲望のためなら他人を蹴落とす事さえ厭わない人間が居ることも。
「俺みたいな人間なんて、掃いて捨てるほど居るはずだぜ。人様の前では綺麗事ばっか吐きやがって、反吐が出る」
チラつく過去を、憎たらしげに思い出しては唇をかみ締めた。
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『優しいピエロ』