問題アリ(オカルトファンタジー)
「お前、こんな所で何してんだ?捨てられたのか、新しく出来たオトモダチに」
う…、とまた湿った声が聞こえる。それでも顔は笑顔のままで、なんとなく感情と表情の誤差を感じる。
人間はこの誤差に違和感を感じやすく、それを『気味の悪いもの』と認識することが多い。
しかし特に気にした様子も無く、なんとなく事情がわかったような気がして、フィンはまじまじと先ほどまで土に埋められていた泥だらけの、ピエロを眺めた。
赤ん坊ほどに小さいが、糸を手繰れば手足だけでなく目も口も首も動く、本格的なマリオネット。
だがしかし、いくら作りがよかったとしても人間の、特に子供なんてあまりピエロと言う物を好まない。
真っ白な肌に、赤い鼻と唇。不用意に派手なメイクと、歪な笑顔。
派手なメイクの下に、無理矢理に作られた笑顔の下に、何かが隠されているのかもしれないと疑ってしまうのである。
現に、ピエロ恐怖症(道化恐怖症)という病名も存在し、実に多くの割合でピエロ恐怖症となっている人間がいることも確かだ。
「違うよぉ、僕、捨てられてなんかないよ…!」
「埋まってたじゃねぇかよ。それも随分と長いこと」
「ぼ、僕を捨てたのはママさんだもん!エドガーには捨てられてないもん!」
「でも探しに来なかったんだろ?一緒だよ。そのエドガーも、どうせ今は新しいおもちゃに夢中だよ」
ピエロの人形はその歪に作られた笑顔のまま泣いた。
エドガー、エドガー、と誰も糸を手繰ってなどいないにもかかわらず口を開いて。
それはとても気味の悪い一時だった。