問題アリ(オカルトファンタジー)
中に誰がいるのかわかっていないラルフは首を傾げて誰がいるのか知りたげだ。
扉を開けて来客用の懺悔室を通り抜けて普段寝起きに使っているフィン専用の部屋へと入ると、猫に戻っていたエレンがフィンのソファの上で、丸くなっていた。
フィンは抱いていたラルフをエレンへと近づけた。強制的に近づけられたラルフは久しぶりに見る猫に、少し嬉しそうに手を伸ばそうとする。
が。
エレンはヒョイ、と避けて床へと飛び降りた。そして。
「何ですかこれ。マリオネット?気持ち悪い人形ですわね」
「言ってやるなって」
勿論それは泥だらけで塗装も剥げ、ただでさえ気味の悪い見た目がさらに見苦しくなったラルフの外見ではなく、そのラルフが 死 ん で は 居 な い ことを言っていたのだが。
ラルフはその一言に、ぶらん、と身体を脱力させた。その顔はやはり笑顔のままだが湿った声が漏れたのを聞き取ると傷ついたようだ。
そんなラルフを横目に、フィンはとりあえずエレンを連れて祭壇へ戻ると長椅子に座って今までの経緯を簡単に伝えて、ラルフの家を探してほしいとエレンに頼んだ。
「……ですが私の予想では…」
「うん。でもさ、人を助けるのに代償無しだとは思ってないし。助けてやりたいんだ、コイツ」
エレンは言いたかった言葉を飲み込み、ため息をついた。
家へと戻してやる前からわかる。ラルフは人間に受け入れてもらえずに、また傷つくはずだと。
フィンはそれでもニコニコと笑ったまま、ラルフに手を貸すことを止めようとはしない。
もう一度深いため息をついてから、エレンはラルフの匂いを嗅いで、覚えると人型へと変化した。
そしてさっさと出て行ってしまった。