問題アリ(オカルトファンタジー)



ラルフは猫がいきなり近づいて、かと思ったら人間になってと、わけがわからずにフィンへと目を向ける。


その視線の中には『匂いだけでわかるのか?』という疑問の視線も混じっている。


そんなラルフの視線に、フィンはニィ、と笑いながら得意げに返す。



「大丈夫だよ、エレンの鼻はよく利くからさ」



言って、長いすに寝転がろうとして、寸でのところで止まると、寝転がるのを止めて長いすに腰掛けたまま何をするでもなく蝋燭の光に浮かび上がる磔刑にされたキリストを眺めては無感動に欠伸を一つ。



「なぁラルフ、エドガーがお前のこと要らないって言ったらどうするんだ?」



「そんなこと、エドガーは言わないよ!言うとしたら、ママさんに言わされてるんだ。エドガーのママさん、威圧的で怖いんだ。エドガーはいつも怯えながら僕を抱きしめていたんだよ。パパさんがいた頃はまだよかったんだけど、ある日いなくなっちゃって…それから」



「ふぅん?……なぁラルフ、人形になる前って覚えてるか?」



ニヤリと口の端を吊り上げて問いかけるフィンに、ラルフは笑顔を浮かべたまま固まり、その笑顔のまま答えた。



「覚えてないよ、僕は気づいたときから人形だもの」



「そっか」



バン、と扉が開いてエレンが帰ってきた。四つん這いから二足歩行に戻してフィンへと近づくと珍しく長いすに寝転がっていない彼をチラリと眺めてその隣、ラルフのいないほうへと腰を掛けた。



「電車で二時間ほど離れた、シュガークラッツっていう町ですね。屋根は青で、風見鶏がついてる。大きな桜の木が庭の真ん中にあって、埋められた池もありました」



「そ、それ!エドガーの家だよ!」



驚きと、感動の声を上げてラルフは叫んだ。






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