問題アリ(オカルトファンタジー)
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糸で表すならば、ピンと張り詰めた状態。


全てが全ての均衡を保ち、唯一つを作り上げる。無音の状態。


そこに緊張感が少しでも混じれば、その無音は不自然なものに簡単に変わる。


無音の状態というのは、水のようだ。何か少しの異物が混じれば揺れて波打ち、簡単に均衡が破れてしまう。


それが破られたときというのは、普段気づかない人間でさえもその違和感に気づき、ふと、背後を確認してしまうのだ。


その違和感が、他者の存在であると認識してしまうと。


部屋で横になっているエドガーはつい数時間まで胃の中に大量に注ぎこんだアルコールのおかげで深い眠りについていた。


だがしかし、アルコールが睡眠を促すのは最初のみで、段々と眠りを浅くしていくものだ。


深いと思っていた眠りは気づかないだけで浅い睡眠でしかなく、その浅い睡眠は微かな音や、無音状態の中に紛れ込んだ違和感も簡単に感知しては崩れて、目を開けてしまうのである。


そう、今も。


エドガーはふと、目を覚ました。それはスッとした目覚めで、三時間睡眠がうまく行ったときのようだった。


身体には特に違和感はない。


暑くも寒くもなければ、咽喉が渇いたわけでもトイレに起きたわけでもない。


次の日の仕事を心配していたわけでもないし、夜中に見たいテレビがあったわけでもない。


意味もなく、目を覚ました。


微かに頭が重い。目蓋も重い。


アルコールを摂取しすぎた身体は当初よりは熱を落ち着かせはしたものの、まだ少し体に残っているようで、浮遊感は抜けない。寝起きだと更に、だ。




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