問題アリ(オカルトファンタジー)
「うわ!」
階段に隠れるようにして座っている、飼い猫のミリーが拗ねたような顔でエドガーを見上げていた。
先ほど蹴り飛ばしたのはこれだったようだ。
エドガーはため息をついてその茶トラの毛並みを撫でて苦笑する。
「悪かったなミリー、見えなかったんだよ」
ウミャア、と不服げな声を上げてミリーが答える。
ぽんぽんとその身体を叩いて、薄黄色の電灯に照らされた階段を下りてキッチンへと進む。
人が行き来しないそこは微かに冷えて、睡眠時に下げられた体温が活動し始めたことにより上がってきた今の身体には丁度よかった。
キッチンの扉を閉めて、食器棚からグラスを取り出して、水を注ぎ入れると、それをグイッと咽喉に流し込む。
熱を持っていた体内は、その強引な冷たさにより一瞬の熱の下降を施される。
フウ、と一息。
シンと静まり返るキッチンは勿論人影などなく、別室で眠っている母親が起き上がってくる気配もなかった。
付近の外灯のおかげで夜中とはいえ青白い光に照らされたキッチンは明かりをつけなくても明るい。
シンクにグラスを置いて、 開 い て い た 扉から廊下へ戻るとまたミリーを蹴飛ばさないように気をつけながら部屋の前まで向かい、廊下の電気を消して部屋へ戻る。