問題アリ(オカルトファンタジー)
*
「だから言ったのに、可哀想」
「嘘付け、清々してるくせに。お前ピエロ嫌いなんだろ」
図星なのかエレンはプイ、とそっぽを向いてからもう一度目の前、正確には桜の木の上から、少し離れた庭の一角をフィンと一緒に眺めた。
その青い屋根と風見鶏のついた家の一角では焚き火が行われていた。
バチバチと不穏な音を鳴らしながら、枯葉や紙くずを舐め回す炎はそれと同時に、その人形も舐め、その組織を死滅させていた。
黒い衣装を身にまとったピエロのマリオネット、ラルフ。
友人エドガーのために埋められてから十年経った今でも傍にいようと戻ってきたというのに、そのエドガーはラルフを拒絶して、今は庭から離れた家の軒先で母親に燃やされているラルフの煙を目で辿っていた。
「道化師ラルフは町を歩く。いつもいつでも笑顔だけれど、玉乗り・お手玉下手くそ。道化師ラルフの観客は、いつもいつでも喋らない、にゃーにゃーにゃーにゃー言うだけだ」
木の上で足をぶらつかせながらフィンは楽しそうにその物語を諳んじた。
『道化師ラルフ』と名づけられたその物語は他国で広く知られている童話だが、この国ではまったく知られていないようだ。
その物語は道化師のくせに芸も何も出来ない、出来損ないのラルフという男が、お金が稼げないからと盗みを繰り返し、最期には人柱に使われて橋となり漸く町の人間に愛される、という内容。
「止めてくださいよ、あたしその物語嫌いなんですから」
「何で?人間っぽい身勝手ないい話じゃないか。事実とは異なるけどな」
「だから言ったのに、可哀想」
「嘘付け、清々してるくせに。お前ピエロ嫌いなんだろ」
図星なのかエレンはプイ、とそっぽを向いてからもう一度目の前、正確には桜の木の上から、少し離れた庭の一角をフィンと一緒に眺めた。
その青い屋根と風見鶏のついた家の一角では焚き火が行われていた。
バチバチと不穏な音を鳴らしながら、枯葉や紙くずを舐め回す炎はそれと同時に、その人形も舐め、その組織を死滅させていた。
黒い衣装を身にまとったピエロのマリオネット、ラルフ。
友人エドガーのために埋められてから十年経った今でも傍にいようと戻ってきたというのに、そのエドガーはラルフを拒絶して、今は庭から離れた家の軒先で母親に燃やされているラルフの煙を目で辿っていた。
「道化師ラルフは町を歩く。いつもいつでも笑顔だけれど、玉乗り・お手玉下手くそ。道化師ラルフの観客は、いつもいつでも喋らない、にゃーにゃーにゃーにゃー言うだけだ」
木の上で足をぶらつかせながらフィンは楽しそうにその物語を諳んじた。
『道化師ラルフ』と名づけられたその物語は他国で広く知られている童話だが、この国ではまったく知られていないようだ。
その物語は道化師のくせに芸も何も出来ない、出来損ないのラルフという男が、お金が稼げないからと盗みを繰り返し、最期には人柱に使われて橋となり漸く町の人間に愛される、という内容。
「止めてくださいよ、あたしその物語嫌いなんですから」
「何で?人間っぽい身勝手ないい話じゃないか。事実とは異なるけどな」