問題アリ(オカルトファンタジー)
いつの間にかエドガーは部屋に戻ったらしく、軒先から姿を消していた。エドガーの母親は焚き火に水を掛けると袋に燃えカスを乱暴に詰め込んでゴミ捨て場へと捨てに行った。
桜の木から飛び降りてフィンはその後ろをついていく。人間にフィンの姿は見えないのでその辺は気兼ねない。
エドガーの母親がゴミ捨て場から去っていったのを見計らってフィンはそのゴミ袋を開けて、ラルフを出してやった。
「大丈夫か?」
「熱いよ、痛いよ、ひどいよぉ…僕はエドガーに嫌われるようなことしたの?僕、エドガーがまた泣いてたら心配だから来たのに…」
「ラルフは何もしてねぇよ。エドガーが約束を破ったんだ」
「…エドガー、僕が燃やされるとき、すごく沈んだ顔してたんだ!きっと、ちょっとびっくりしただけなのに、ママさんが僕のこと燃やしたから悲しかったんだよ!ママさん、いつもやりすぎなんだ…一人息子だからって、過保護になって…」
真っ黒の肌にはもう何一つ身に着けてられていない。紐も切れてしまったラルフはその墨のように細く腹部は丸い、まるで赤ん坊のような体形の黒い身体を動かしながら、必死に訴えかけた。
エドガーが裏切るはずがない、と。
悪魔の元で改心させられた魂は、異常なほどに綺麗事を吐く。
その言葉を聴きながらフィンはうんうん、と頷きながら、その真っ黒の肌を指先で撫でて囁きかけた。
「そう、あの母親さえいなくなればエドガーも自由だ。エドガーに笑顔が戻るぜ。最初はそりゃあ悲しむ振りはするけど、すぐに元気になる。あの母親を消せば、もうラルフは頑張らなくてもエドガーを笑顔にすることが出来る。お前が笑顔にさせるんだ、泣き虫エドガーをな」