問題アリ(オカルトファンタジー)
大型車には似つかわしくない細いゴム。
しかしそれを訝しがるほど、母親はトラックに通じてはいない。
交通量が僅かに増え、速度表示の数が増える。グイ、とアクセルを踏みながらなんと無しにそのゴムひもを眺めていた。
ひらひら、ひらひら。
いや、
ふらふら、ふらふら、といえば良いだろうか。
それにはゴム紐のようなうねりがなかった。
波打ってはおらず、それは、そう、 真 ん 中 に 何 か 硬 い 支 え 棒 の よ う な も の が 入 っ て い る も の か 、 あ る い は そ れ 自 体 が 硬 い 何 か で あ る か の よ う に 、左右に揺れるだけだった。
荷台から振り子のようにふらふらと、揺れる、それ。
違和感。
ズ、ズ、とそれは微かに、僅かに、目に見えないほど、しかし確実に、それは伸びていた。
ぶらん、と垂れ下がる、荷台からはみ出た、黒いそれ。
荷台に隠れたその奥が、徐々に徐々に姿を見せる。黒い、塊。
まあるい、それは荷台から少しずつ姿を見せたが、その固体を理解するまでの時間は随分と掛かった。
それが到底ゴムではないと気づけば、次に『何?』がくる。
息子と同じで、それが、それであるという方程式が脳内に構築されていないからだ。
ヒントが厭でも目に入った瞬間、呼吸は止まり、心臓は壊れるのではないかというほどに膨れ上がって、鼓動した。
燃やしたはずの、あのピエロが、燃やされたその時と同じ真っ黒な裸体を晒して、荷台の縁を支えにこちらへと顔を向けていたのである。
それだと気づいたのは、燃やしても変わらなかった、あの青い、ガラスの目。
燃やしている間中、ずっと母親へと目を向けていた、おぞましい青の目。
あの目がゆっくりと黒い瞼で瞬きをする。