問題アリ(オカルトファンタジー)
「ラルフっていうんだろ、お前」
「君は?」
「フィン。死神」
そうか、と無感動にラルフは呟くと手についた血を服で拭いて手を伸ばした。
取れきれない赤を残した手を、フィンは掴んで握手を交わす。奇妙な男だと、見かけたときから思っていたので、仲良くなれることは光栄だった。
基本的にフィンは人間は嫌いだが、自分と似た人間は好きなのである。
「僕を連れてってくれるの?」
「残念ながら。俺もう少しお前の人生見たいし」
ニシシシ、と笑いながら肩を竦めるフィンを見て、残念そうに、それでもどこか無感動に「そうか」と呟くラルフ。
もう十九人ほどを殺しているラルフは、化粧で作られた笑顔を貼り付けたまま、静かに呟く。
「人ってあっけないのに、何で僕はこうなれないんだろう」
「さぁ?」
「僕はいつまで生きるの?」
「さぁ?」
「僕の魂は、どうなるの?」
「さぁ?」
「………」
「………」
ニヤニヤと楽しそうなフィンと、そんなフィンを訝しげに見つめるラルフ。
諦めたのか短剣の血を服で拭って、ポケットに収める。
笑っている化粧とは裏腹に、本当の顔は口角をピクリとも動かさない、冷たい表情だった。