問題アリ(オカルトファンタジー)
「フィンって、死神の見習いとか?」
「これでも数百年続けてんだけどな」
「じゃあ何で答えられないの?」
「お前の魂は俺の管轄外だからかな」
「どういうこと?」
「つまり、お前はー……殺人を犯した。しかし俺は民事事件専門、刑事事件は関わらない。…人間で言うとそんな感じ、かな」
「ふうん」
何となく納得したのか、そんな返事を返しながらラルフは女の持っていたバッグからお金を盗むとポケットに入れた。
そしてフィンが腰掛けている木箱の隣に腰を下ろした。
「フィンは僕を笑わないんだね」
「ん?面白いとは思うけどな」
冷たい風が吹く。
光の当たらない裏路地は、日の当たる表通りとは違って薄ら寒い。
微かな湿気と、沢山の影を吸っているここは、影に見初められた人間が集まる場所だ。
どこかで喧騒が聞こえるし、きっと聞こえない声で王家の人間の暗殺を企んでいる人間だっているのだろう。
実際人を殺した人間だってこの裏路地にいるのだから。
「フィン、僕が死んだら、ちゃんと消してくれ」
「だから俺、管轄外だって。このままいけば、お前は悪魔に改心させられて、生まれ変わる」
嫌だ、とポツリ、もらした。
「人を殺すのも、生まれ変わるのも、指差されて笑われるのも、何をしてもうまくいかないのも、もう嫌だ。この世界にも、あの世にも、僕の居場所なんてないよ。未来に期待なんて抱けない。希望の光も見えない。僕は、裏路地の石ころだ。誰かに蹴られることもない、石だ」
「嘘付けぇ」
ケラケラと笑い声が聞こえて、ラルフは目を丸くしてフィンを見る。
少なくとも、嘘をついた気などわずかもないのだから仕方がない。
だけどフィンは百パーセント確実に、自信を持って言い切った。それは嘘だと。
僅かに眉を寄せて、言い返すラルフ。