問題アリ(オカルトファンタジー)
「何で嘘だって思うの?」
「隠しすぎてわからなくなっただけだよ。その化粧みたいに塗りたぐり過ぎて落ちなくなったみたいにさ」
「そんなこと…」
「わかるさ。…あ、嘘。ごめん。わかんねぇかも。…でもさ、傷つけられねぇように隠した何か、ある気しねぇ?殺人鬼が道化師になりたかったわけじゃねぇだろ?なんかがあって、道化師になりたくて、なれなくて、殺人鬼。何か過程はあるもんだ」
フィンの言葉に、ラルフの表情が一瞬厳しくなる。
何か思い当たる過程があるのか、暫く厳しい目でフィンを見つめて、すぐに顔を逸らしてつま先がクルンと丸まっている靴を見つめて、ポツリと呟いた。
「……僕の家、あまり良い家庭とは言えなくてさ、両親険悪だから全然笑わなくて、僕もその中で育って、笑わなくなったんだけど……学校で、サーカス団が来てさ、そこで久しぶりに笑ったんだ。それで、この仕事なら楽しそうだ。毎日笑っていられそうだって、思って…周りも、両親も、笑ってくれるんじゃないかって、思ってはじめたんだけど」
結局はうまくいかず、周りは笑ってはくれたが、それはあざ笑いだけで、両親は馬鹿みたいな仕事だと道化師を罵り、ラルフを家から追い出した。
道具箱一つだけが、自分の味方だった。
肩身が狭く、それ以上に寂しさがいっぱいだった。
歩み寄ろうとするのに、すればするほど遠ざかる人々。遠ざかるのに、指を差して笑う人々。
ポタリと、雨が降ってきた。
ラルフは顔を上げるけれど、フィンは雨には気づいていないようで、ニヤニヤと笑顔を浮かべながら、「ほら」と呟いた。
自分の頬を撫でると、濡れていた。返り血かと思ったが、透明だった。目元から頬だけを伝っていく雨。