問題アリ(オカルトファンタジー)



「フィン、僕もしかしたらやり直したい。きっと死刑だけど、もし次があるなら、一人でいいんだ、友達でも、家族でも、なんでもいい、誰でもいい、僕を必要としてくれた人の傍に居てあげたい。僕自身も誰かを、必要としたい。誰かと交われるような、人間になりたいよ。一人はもう、嫌だよ。ずっと寒いんだ。ずっと、ずっと。背中が。こんな、化粧しなくても、笑顔に、させれたら、なれたら、……いいな。願っても、もう報われないって、思って、忘れたもの、あるとしたらこれだと思う」



グシグシ、と目元と頬を拭ってラルフは微かに笑った。


それは、返り血では落ちることのなかった化粧が涙で剥がれたからこそ、見えた本当の表情だった。



「おーおー、イケメンじゃねぇか。化粧落としたほうが良いと思うけどな」



「そうだね。次は、こんなものに頼らないよ」



遠くから悲鳴が聞こえた。


女の金切り声のようなそれは、首を掻っ切られて死んだ女が流した大量の血が表通りにまで流れて行った所為でそれに気づいた女が、死体を発見して発した声だった。


ドヤドヤと人が来て、たった一人、木箱の上に座っているラルフを見つけて、何かを捲くし立てている。



「ねぇ、フィン。僕の最初の親友」



「何、ラルフ」



「もしもさ、僕がフィンの管轄に何かの間違いでなったら、叶えて欲しいんだ。さっき言ったこと」



「ラルフを必要とした誰かの傍に、ってやつか?」



「うん、頼めないかな?」



「……管轄になったらな」



街の人間たちが木の棒を持って走ってくる。


怒声が響いてうるさいはずなのに、ラルフが笑って呟いた『ありがとう』はフィンの耳にちゃんと届いた。


殴られて倒れるラルフをフィンは静かに見つめていた。そして血だらけのまま担がれ、橋に埋められるまでを、ただ静かに。


結局魂はこの世に未練がなかったので悪魔の管轄になり、フィンの元へは来なかったのだが。


そして、数百年の時を超えて。


人形となったラルフの泣き声が、フィンの耳に届いた。






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