問題アリ(オカルトファンタジー)
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数年後。
二十八歳のエドガーはその日、ひたすら神に祈りをささげていた。
冷たいロビーの一角。
ソファに座りながらただ手を組んで、この部屋の先で生き物が出来る最大の奇跡を迎えようとしている妻の安否と、新しく出来る家族へ祈りを。
何時間も、同じことをしていた。
ロビーには妻の両親と兄弟、エドガーの家族はいない。父親は失踪、母親は交通事故で亡くなっており、兄弟も居ない一人っ子なのだ。
そんな不憫な環境下でも、エドガーは今幸せを掴もうとしていた。
赤子の鳴き声。
力の限り上げられる、その小さな生命の声がロビーに届いた瞬間、エドガーは神に感謝して妻が出てくるのを待った。
暫くして、赤子を傍において運ばれる妻。
その傍で数え切れないほどの感謝と愛を囁き、笑いあった。至極幸せそうに。
妻は、掠れた声で、笑いながら言った。
「この子ね、私と同じ青い目よ」
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『暖かい木』