問題アリ(オカルトファンタジー)
*




「エレンー、ブラッシングー」



「どうされたのです、フィン様。珍しいったらありゃしない」



「一週間に一回って言っただろ?」



「最後にブラッシングされたのは二ヶ月前ですわ」



う、とドモりながら白い外套(マント)を翻して住居としている教会の一番前にある長椅子へと腰を下ろして、祭壇の上で休んでいる白いペルシャ猫を膝を叩いて呼んだ。


ピョンと祭壇から降りて軽やかにトントンと跳ねながらフィンの膝に乗っかったエレンはその上で伸びた。


ブラシをエレンの毛並みに沿って掛けてやりながらその綺麗になった毛並みを辿るように撫でる。


ふと、引っ掛かりを覚えて、フィンは何度かその箇所を手の平で撫でる。


それは毛が絡まっているとかそういった物理的なものではない。


撫でる手に、違和感。



「エレン、お前いつも散歩ってどこに行ってんだ?変なやつに撫でられてるだろ、思念が残ってんぞ」



「そりゃあこれだけ綺麗な毛並みですもの、撫でられますわよ。人間、地縛霊問わず。今日はいつもと反対方向へ行きましたわ、ここを出て左に行けばある町ですけど」



フィンは残されている残留思念の内容を探ろうとするが、薄く小さく儚い所為でよくわからない。


わかるとすれば子供だ。好奇心がちょっとと、悲しみがちょっと。


それだけならば気にはしなかったのだが、その中に絶望が混じっていたのである。


基本的に、地縛霊といえども絶望を抱くことは殆どないに等しい。何故ならもう死んでいるのだからこの世に何かを期待することがないのである。


絶望を抱くとすれば、死んだと気づいていないか、余程心残りがありそれが叶わないと知ったのか、そんなところだろうか。


何にせよ疑問だ。




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