問題アリ(オカルトファンタジー)
「猫さんおかえりー」
ギュウ、とエレンの身体を抱きしめた少女は門の人影に気づいて眩しそうに目を細めながら見上げる。
フィンは門を飛び越えると庭先に入ってきて少女の傍にしゃがみ込んだ。
「この子、お兄さんの?」
「うん。エレンって言うんだ。君、エレンに何かお願い事した?」
「……でも、無理なの」
言ったことは覚えているようで、エレンを見ながら呟いた少女は、悲しそうに首を横に振ると、縋るようにエレンの身体を抱きしめた。
「なんで?」
少女は、言ってしまえば期待していないと言う目でフィンを見上げた。
特に悪意があるわけではなく、フィンもその目を向ける感情だけは理解できるので、そこは信用してもらうしかない。
エレンが話して、と急かすように一言ニャア、と鳴くと、木の傍から、今度は老婆が現れた。
小さく少し肉付いたその老婆は顔中に皺を刻んでおり、特に目じりの皺は際立っていて、その皺を深く刻み、フィンたちへと歩み寄ってきた。
途端に、フィンの目が細められる。眉を寄せて何かを思い出しかけたような、それでも思い出せないようなそんなあやふやな表情。
千年以上も生きていれば一度や二度会った人間はいくらでも生まれ変わってもう一度出会うことはあるのだが。
何か、彼女に関わる記憶があったはずなのに、思い出せない。
次の言葉が暫く尻込みして出てこなかったところを、訝しんだエレンがフィンへと声を掛けて、沈黙を置いていた自分に気づくとフィンは漸く口を開いた。
「………おばあさんは?」
「私がお話しましょう……えっと…」
「…俺はフィン、死神。こっちの猫は使い魔のエレン」
「よろしく」
突然しゃべりだした猫に少女は目を丸くして、キラキラとした目で感激していた。
老婆は思わず笑い出して「芸達者な猫ちゃんね」なんて、ちょっとずれた返答をしていたが、特に二人とも、そこに突っ込むことはしなかった。
「フィン君とエレンちゃんね。私はグレタ、この子はシェリー。まずはどこからお話しようかしらね…」
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