問題アリ(オカルトファンタジー)
両親を早くになくしたテレジアと妹は両親の残したクリーニング店を必死に切り盛りしていた。
穏やかで内向的なテレジアと、活発で外交的な妹。店は段々と軌道に乗って繁盛し、衣食住に困ることは無くなった。
毎日毎日やってくる布たちを洗濯機に掛け、温度と洗剤に気を遣い、乾燥させれば今度は一枚一枚糊付けとアイロン掛けや裾直しをする日々。
仕事が丁寧で服も痛まないという噂を聞きつけてどんどん人が増え、服の量も増えた。
そこへ、毎日のようにワイシャツを持ってくる男が妹に目をつけてやたらと話しかけてきたのである。
顔は良いが軽そうで、所謂軟派男だ。
沢山のプレゼントを持ってきては、デートの約束をこじつけようとする。用もないのに店の周りをうろつく。
手紙を送ってくることもあったり、専用の携帯電話を贈って来たこともあった。
しかし客を蔑ろにする事も出来ず、遠巻きに二人を見守っていたテレジアだったが、ある日出掛けた妹が大量の酒を飲まされてフラフラと帰ってきた。
どうしたのか、と聞くと、例の男に出会って酒を飲まされたという。
酒に酔って何がなんだかわからなくなっている妹に、男は乱暴したらしく、妹の服は乱れていたが妹は何も覚えていないという。
その次の日、妹は一日家で休んでいたのだが男はあろう事か、店にやってくると妹と同棲したいと言い出しにきたのだ。
そんなことを認められないテレジアは怒鳴り上げて二度とこの店に近付くな、と言って男を追い出した。
逆上した男は日を改めて、店に出ていた妹を連れ出すと車に押し込んでそのまま逃走。
テレジアは妹を追いかける途中で車に撥ねられて死亡。それが一ヶ月ほど前のこと。
その後、妹の所在がわからないという。
以上がテレジアの話で、それを聞いてフィンは「ふむ」とだけ呟いた。