問題アリ(オカルトファンタジー)
フィンが駆けつけると、そこにはもう何人もの業者がおり、チェーンソーを掲げていた。
聞けば、母親に内緒で猫がいないだろうかと木に近づいた娘が木の根に躓いて転んだのだという。
その傍には大きな石があり、もう少しで少女の顔、ないし頭にぶつかる所だったのだそうだ。
それを呪いだと感じた妻はもう嫌だ、切ってくれ、と夫に頼んだのだ。
勿論、本当は顔にぶつかるはずだった所を、グレタが抱きとめて、何とか横に逸らしたからこその奇跡なのだが。
フィンはチェーンソーへと細工をして、中に大量の髪の毛を絡める。
動かそうとした業者の人間が、機械に詰まる何かを引きずり出したとき、一斉に悲鳴が上がった。
のこぎりは木に切り込みを入れた瞬間、ボキッと刃が真っ二つに折れ、斧は柄が折れ、使い物にならなくなった。
とりあえず人に危害を加えていないもの、現場は騒然とし、妻に関しては悲鳴を上げて子供たちと一緒に部屋に隠れてしまった。
業者たちも気味悪がって手を挙げて帰る始末。
結局木を切り取るという話は落ち着き、フィンたちの勝利かと思われた。
が。
その一件以来、妻がどんどんノイローゼになり始めたのだ。
ブランコの軋む音が人の囁いている声のように聞こえると言い出し、ブランコを取り外してしまった。
それでも、木の傍の何もない暗闇に誰かが立っていると言い出したり、葉が風に擦られる音に誰かが囁いていると言い出したりとそれはノイローゼというよりは被害妄想の部類である。
ガラス戸は滅多に開かなくなりカーテンさえも開かれなくなった。
あれほど聞こえていた笑顔は消え、時折皿の割れる音や、怒声が響くようになっていったのである。
子供たちは幼稚園バスから降りても暫くは家に入ろうとせず、近くの広場で遊んで帰るようになった。
それでも家に入りたくないのか、それでも母親に甘えたいのか、母親の機嫌を伺う日々が続いた。
何もないのに妻が叫ぶ声が聞こえて、悪夢にでも魘されているのだろうか、夜中に絶叫じみた悲鳴をあげるようにもなった。
幸せそうだった家庭は、もろくも崩れ去り、家主もお手上げ状態だった。