問題アリ(オカルトファンタジー)
「……この木さえなくなれば…」
ポツリと、家主は自分の祖母が立っている木を見つめて呟いた。
その決心をつけた自分の孫を、グレタは酷く悲しそうに見つめていた。その隣のシェリーも同じ顔をしている。
その日の夜、グレタはフィンに今回の作戦の中止を求めた。
勿論フィンがあっさりと了承するはずがない。
「諦めんなよ!あの女の記憶を消せば問題ないはずだろ、子供にも男にも、記憶を消してやり直せば…」
「もし、木を切っても元に戻らないなら、そうしてくれるかしら?木の思い出ごと消して頂戴」
吹っ切れたような表情で、グレタはフィンに笑いかけた。
その表情に思わず言葉が出なくなる。何か言わなければ木は愚か、グレタもシェリーも消えてなくなるというのに。
「見守りたかったんじゃないのかよ、そんな簡単に諦められるほどのことだったのかよ!」
「諦めたんじゃないのよ。見守ってやりたいけど…子供たちがあれじゃあ可哀想だよ、まだ母親に甘えたい年頃なのに、母親があんな風になってしまったんじゃ……ねぇ?」
言って、電気のついた子供部屋を見上げる。
そこには子供に辛く当たる母親の黒い影が見えていた。
ちょっとしたことでイライラして、物音一つに敏感になった母親は子供が出す騒音が苛立たしくて仕方がないのだろう。
最後の綱だと、フィンはシェリーに向き合う。
「シェリーだって、消えたくないだろ!?」
「……でも、おばあちゃんがいない世界にいても、つまらないから、おばあちゃんと一緒に行く」
「フィン君、よければあたしの代わりに見守ってあげてくれないかしら」
お願い。
グレタはそう言って、笑った。