問題アリ(オカルトファンタジー)

グレタはシェリーの手を離してフィンの手を取ると、その拳を解かせて、その手の平を撫でた。


その体温のない体温が不愉快で、無いはずなのに何処か暖かい気がして気持ち悪くて、バシッとその手を振り払うフィンに、グレタはもう一度手を伸ばした。いや、グレタは何度でも伸ばすつもりだ。



「そういう偽善、一番ムカつくんだよ…誰かのため?バカバカしい、どれほど努力した所で、あんたの優しさなんて誰も気付かねぇよ!あんたが踏みにじられてることをあいつらは知らない、誰かの犠牲の上で成り立つ幸せをあいつらは何も知らずに啜っては蔑ろにするんだ!足りなくなったらどこまでも搾り取ろうとする!もう搾りきったと知ったら簡単に投げ捨てるんだ!」



「あたしも随分と見落としてきた優しさがあるよ。でもね、フィン君。あたしはフィン君の優しさ、ちゃんとわかってるよ。あたしやシェリーのために頑張ってくれて、今も励ましてくれてる。諦めるなって」



「べ、…別に励ましてなんか…」



「あら、そうなの?でもそういうものなのよ、自分で気づかないものが人への優しさになっていることも、あるの。優しさってのは照れ屋さんだからね、見せたいときには見えてくれないし、気にしてないときにひょっこり、現れるものなんだよ」



わかるかしら、とフィンの手をしわしわの柔らかい手がヨシヨシと撫でながら問いかける。


フィンよりは小さい手のはずなのに、大きい気がした。


体温に慣れていないフィンはそれが気持ち悪くて振りほどこうとするのに、何故か、抗えない。



「…わかんねぇよ、誰も教えてなんてくれなかったんだから…何も、…。あんたが思ってるって、皆のこと考えてるって、教えてやれば…!」



「うん、でもね、人は物じゃないんだよ。例え家族であっても、自分の感情を一方的に押し付けちゃ可哀想だ。感情はね、すぐに溢れるからいっぱいいっぱい、渡そうとしてしまうんだ。けどね、人の感情の持てる重さは限られてるんだよ。あまり渡してしまうとね、溢れて潰れちゃうんだよ」





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