問題アリ(オカルトファンタジー)



ズン、とフィンの身体に急に重みが加わって、思わずフィンはグレタの手を離してニ・三歩後退った。


何かが乗ったわけではない。


ただ、何故か身体が重たくなった。目の前が暗くなるような。それは、絶望なのかもしれない。


何でも出来ると思っていた。


もう、あの頃の力のない子供ではないと、思っていたのに実際はこんなにも無力で、何かを壊す力はあるのに、守りたいものを守れる力は、なかった。


あの頃も、今も。



「……今までありがとうね、フィン君。もしも、あたしが生まれ変わって、フィン君も人間になる機会があって、あたしのこと覚えてたら会いに来てね。いろんなことを教えてあげる。おいしいケーキも、あったかい布団も、見える優しさも、見えない優しさも。ね、約束」



そう言って、グレタは小指を出した。


それが何を示すのか、フィンは知らない。交わしたことなどなかったのだから。


フィンは困惑気味に、グレタの小指と、顔を交互に見つめて首を傾げた。



「……約束…?」



「こうやってね、小指同士を絡めるのよ。指きりげんまん、あたしが忘れてても怒らないでね?」



「シェリーも約束!」



言って、シェリーもフィンの小指に自分の小指を巻きつけた。


絡まった指が解けた瞬間、ポツリ、ポツリと雨が降ってきた。段々と勢いをつけた雨はフィンの服を、エレンの毛を、家族を見守る柿の木を、濡らす。



「………ごめ…」



コンクリートを、土を、屋根を、叩く雨の音にかき消されそうな声が、小さく落ちた。



「…ごめん、…な……」



吐きそうなほどに悔しかった。






ま た 、 あ の 日 を 繰 り 返 し て し ま う 。




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