問題アリ(オカルトファンタジー)
二人が溶けた空は恐ろしいほどに美しい青空。
フィンにも見せたいと、エレンは思った。
結局、あの木は切り倒されることには変わりはないのだが、その木の幹を使って庭にテーブルと椅子を作ることになったという。
だから空へ昇ったのか、ともう溶けて消えてしまった二人を見つめるように空を眺めると、エレンは人の形に姿を変え、フィンのいる教会へと戻っていった。
暫く離れたうちに、教会を包む空気は一変していた。
ゾワ、と毛を逆立てて、エレンは中へと急いで戻る。
この感覚、この圧力、忘れるはずがない。フィンでも互角か、それ以上の力を持つ、絶対であり無力の象徴。
生きとし生けるものの血を吸い尽くしたような赤を身に纏う、女。
神だ。
「フィン様!」
駆け寄ったエレンはフィンの無事を確かめてから、神と呼ばれる女、クリスを睨み付けた。
「…何の用です」
「そんなに怖い顔しないでくれる?まだ怒ってるのかしら、ちょっと前に閉じ込めたこと」
八十年ほど前、フィンと黒騎士を訪ねに行った時、エレンはこのクリスに拉致監禁されたのである。
魔力全てを使っても太刀打ちできずに、力尽きて、フィンが迎えに来るまで出ることが出来なかった結界。
全ての力が絶対である故に、近づきたがる人間はいない。
クリスの力に掛かれば、エレンは愚か、フィンでさえも多少梃子摺ったとしても消すことが出来る。特に今のフィンは無抵抗故に、消す事など赤子をひねるように簡単な動作だろう。
睨み合い、と言うよりは一方的なエレンの視線に反して、フィンはエレンの肩を掴んだ。