問題アリ(オカルトファンタジー)
傷だらけの肩を抱いてただ小さく震えていると、バン、と扉が開き、思わず叫びそうになるのを必死に堪えた。
コツコツ、と部屋を歩き回る靴の音。
「オリヴィア、ここに少年は入ってこなかったかな?」
「ケニス様、少年よりも私と遊んでくださいませ?」
「君が欲しいのは、私よりも金だろう?」
言って、突然ベッドの布が捲られ、微かに光を差し込ませる隙間から、その男の顔が覗いた。
嫌にべた付く笑みは、見ただけで吐き気がせり上がって来る。恐ろしくおぞましく憎らしい、顔。
「見つけたよ、ノエル」
言って手を掴まれベッドの下から引きずり出される。
引きつった悲鳴を上げ、抵抗しようとしても華奢なノエルの力では大の大人、しかも肉付きのよく筋肉質なケニスから逃れることなど出来ない。
簡単にベッドから出されると、部屋からも引きずり出されそうになり、ノエルは必死に貴婦人へと手を伸ばした。
「お願い、助けて!助けて!殺されちゃうよ!」
「またね、坊や。いつでも匿ってあげるからいらっしゃい」
貴婦人は金貨に口付けて手を振った。
ノエルはその女が金を渡されて口を割ったのだと瞬時に理解した。まただ。
何日も何日もこの遊びを繰り返して、気づいたのである。
この屋敷の人間は全員でかくれんぼをする。鬼は自分以外の人間全員。
優しい顔をして傷を労わり隠れ場所を提供してくれても、家主であるケニスに尋ねられたら何気ない会話の中で指を差して、居場所を教えては金貨をもらうのだ。
それは、ゲームだった。
ノエルにとっては命をかけた、皆にとってはお金をかけた、汚らしいゲーム。