問題アリ(オカルトファンタジー)
しかし、金のない人間が居なければ、金のある人間は威張れない。
ノエルを含む貧民街に住む人間たちは、きらびやかな世界の人間たちが光を浴びるための踏み台として必要だったのだ。
それでもその必要性など、気づかれるはずもない。
ごみを見るような目で見られることもあれば、汚物を投げられることもあった。その汚物が食べ物だと思って必死に群がる人間たちをみて、笑う人々。
ノエルは、美しい顔をしていて、貧民街の人間たちよりも色が抜きん出て白かった。
すぐに再発する病気を持っていたので外へと出なかった所為でもあるが。
それでも、部屋に居るだけで生きてはいけない。自分も働かねばと時たま綺麗に綺麗に身体を清めて、町を行き交う男から金品を巻き上げてくる事もあった。
面倒になれば殺した。
いや、殆どを殺した。
殺して、金品を奪い、食糧を買い、何とか命を繋いでいたのである。
貧民街の奥深くで、少しだけ裕福な生活をしていたが明るみに出れば殺される事は分かっていたので、ノエルたち家族は貧民街から出ず、時たま家へ盗みに忍び込んでくる貧民街の住人をも手にかけていた。
そんな生活を当たり前に繰り返していたある日。
町でノエルの美しさを見かけたケニスがノエルの家をつきとめ、ノエルを引きずって連れ出したのである。
家族は皆嬲られ、引き離された。それはノエルが14歳の頃のことだった。
屋敷には他にも何人かケニスが連れてきたらしい、子供たちがいて、皆それぞれ傷だらけの身体を一枚の薄い布から窺わせていた。
ある日、親友となったエドがこの屋敷を抜け出して逃げようと言いだした。エドが提案したその話にノエルは一緒に逃げることを決意する。
逃げて、誰も追ってこない場所まで逃げて、二人で自給自足をしながら生活をしていく。
二人なら大丈夫だと、思っていたのだ。