問題アリ(オカルトファンタジー)
しかし逃げ出してすぐに大人たちに追われる形になり、辿りついた倉庫の中でノエルはドラム缶の裏に隠れ、一緒に出てきたエドは少し離れた柱の陰に隠れた。
が、すぐにエドは見つかり、大人たちに殴る蹴るの暴行を受けた。
助けに行かなければ。
それでも、何の力もない自分。
力が欲しいと、願った。
友人を守りたいと。
しかし。
「あの子はどこだ、一緒だろう?ノエルの居場所を言えば許してやろう」
「……の、ノエルは、…あそこのドラム缶の裏に隠れてる!本当だよ、だから助けて!!」
友は簡単に裏切った。
『一緒に逃げよう』『一緒に力を合わせて生きて行こう』。そう誓い合ったはずなのに。
ショックで動けないノエルの肩をあのべた付いた笑顔を浮かべたケニスが掴む。生ぬるい吐息が首筋にかかって、寒気と吐き気がした。
そうして引きずられて、戻ってきたノエルは身体中にお仕置きと言う名の暴行の痕をつけては毎夜毎夜逃げ惑っていた。
屋敷の中での、かくれんぼ。
誰に見つかっても、売られる。
売られた後は、罰ゲーム。
ケニスも、この家の大人たちも、ノエルも、全員が、本気の、かくれんぼ。
助けてくれたその手のぬくもりに癒されては数秒後、その手は恐ろしく気味悪い体温となる。
暖かいのに、人間性など何処にもない、うわべだけの体温。
庭に出れば他の家来たちにすぐに囲まれる。
段々と、逃げる体力さえなくなり、ノエルは過度のストレスと不眠で病気を再発した。
それでも「逃げろ」と部屋を出される。走らなければ、背中を蹴られるので、フラフラしながらいつもは行かないこの屋敷の最上階、時計塔へと向かった。