月読の姫宮
ここから私は語りましょう。
え、私は誰だって?そんなのは全て読んだら分かることです。
その日は小雨でした。
月読の姫は先帝白虎院の御所に呼ばれ、参内していました。
周りは姪姫である姫を、先帝が見初めたと思っているようですが、姫自身は、実の父親が娘に会いたがっているようにしか思えないようです。
決して、先帝は姫を「娘」などと言わないのですが。
「おお……月読の姫…。」
まだ若々しい白虎院は、実に気品があった。
参内した姫を、院は笑ってそばに寄らせる。
御簾越しに話すつもりが、院の希望で中で話すこととなった。
「ますます、我が妹宮に似て……、ささ。もっとこっちによりなさい。」
「いえ、これ以上は……。」
躊躇った姫を見て、院は心底残念そうな顔をした。