僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
「っ! 彗!!」
揺れた空気に顔を上げると、彗が未だ生徒を殴り続ける祠稀に向かっていた。
―――ダンッ!
シン……と静まり返った中で唯一、祠稀から解放された生徒の咳き込む声が響く。
「……彗……」
凪のか細い声が耳に入っても、あたしは彗から目を離せない。
彗は、殴る生徒しか目に入っていなかった祠稀の襟元を掴んで、勢い良く床に叩き付けた。
今度は彗が祠稀に馬乗りになって、金茶の髪を垂らしながら祠稀を見下ろしている。
何をするでもなく、何を言うでもなく。
ただ、祠稀の首に右手を置いて、見下ろしていた。
……ダメ、彗。その手を、どかして。
ダメ、ダメ。やめて……。
彗の右手に力が入ったと感じた瞬間、掴まれていた腕を振り払い駆け寄った凪が、勢い任せに彗を突き飛ばした。