僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ


「やめてっ……喧嘩しちゃダメ……」


毎日のように言っていた言葉のはずなのに、今日はとても悲しく、重く感じる。


震える凪が、顔半分を手で覆って俯く彗が、飄々としてる祠稀が。胸に渦巻いていた不安を、さらに深く広くしていく。


……あたしたちの心が、離れていく。



「日向……っ指導室に来い! 話を聞かせてもらうっ」


どこか怯えを含んだ先生の声に、生徒たちが道を開ける。


祠稀がめんどくさそうに立ち上がった時、ずっと黙っていた彗が、その背中に声をかけた。


「嫌いになりそうだ……っ」


その言葉に、祠稀は何の反応も見せず、先生を追いかけていった。


祠稀を見送る生徒の瞳は、恐怖にしか染まらない。


あたしの頭の中は、どうしてこんなことに、という考えばかり浮かんでいた。


うまく喧嘩を止めることもできなくて、凪にも彗にもかける言葉が見つからなくて。


ただ静かに涙が浮かんで、流れるだけ。



この日、祠稀は1週間の停学処分を言い渡された。

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