僕等は彷徨う、愛を求めて。Ⅱ
――深夜というより、朝方といったほうがいいのだろうか。
時刻が4時を回った頃。リビングから聞こえた足音に、重くなっていた瞼を無理やり開ける。
あたしは急いで、なるべく音を立てないように部屋を出る。
リビングには誰もいなかったけれど、玄関に続くドアは、開いていた。
「……祠稀」
案の定、玄関でブーツを履いていた祠稀の背中に声をかける。
ゆっくりと振り向いた祠稀の表情は、突然の明りに目を細めていた。
「ああ、有須か」
「……どこに行くの?」
そんな、出かけるには大きいボストンバックを持って。
「さぁ、どこでしょう?」
今日見た光景は幻なんじゃないかと思うほど、祠稀はいつものようにおどけて話す。